小川さんの作戦クリニック


1.試合中に用いる作戦に関係するもの

1.試合中に用いる作戦に関係するもの(2の1)
カーリングの試合では相手チームと交互にストーンを投げ合うため、こちらのグッドショットは相手のショットを難しくし、ミスショットは相手のチャンスを広げます。逆に、相手のグッドショットが決まるとこちらのショットは難しくなり、相手のミスショットではこちらに有利な機会が訪れます。これは事実ですが、カーリングは各エンドストーンを16個投げ、全てのストーンが静止してからがどうかというゲームなので、このようなチャンス・ピンチがどんなタイミングで起きるかで結果は大きく異なります。例えば…

○ リードがミスをして流れは相手に。しかしサードのスーパーショットで逆に優位に立った。
○ セカンドがグッドショットを決め優位に立ったが、サードが2投連続ミス。相手有利に。
○ サードの1投目まで互角。相手の作戦ミスで流れはこちら。これを最後まで守りきり3点。

のように、それぞれの場合でそのエンドの結果が異なります。いいエンドを組み立てるためには、リードの1投目がとても大切ですが、一般的に試合・エンドの後半で生じたことがその試合・エンドの結果を左右することが多くなります。よって、試合・エンドのどのタイミングでグッドショットを決めて相手にプレッシャーをかけるか、また、いつ相手のミスを利用して得点に結びつけるかを試合・エンドごとに的確に見極める必要があります。

また、ショットを選ぶ場合、それが易しいショットなのか、難しいショットなのかも大切です。ショットは難しいが、それは自分の実力に見合うショットで成功率の高いものか、それとも10回投げてやっと1回当たる程度のショットなのか、今一度考えてみましょう。難しいショットの選択が得点上危険なものなのか、危険を冒して成功した時の利益が大きいのか、その選択は決して易しいものではありません。
いずれにしても、基本的なショットを氷上で繰り返し練習することで「自分の実力」は向上します。普段の体力・メンタル強化やショット選択の考え方の復習・整理・実践プラン立案はその向上を間違いなく加速してくれます。
< おっ、チャンスだ! >
 一つ上をめざすために習得すべき項目の一つは、試合中に「ここはチャンスだ!」と認識できる技術です。そして、「よし、このチャンスを絶対ものにしてみせる。」という集中力です。ひょっとすると、この試合で相手がミスをする最後の機会かも知れません。では、どのような場合に、「チャンスだ!」と認識しないといけないのでしょうか。一番分かりやすいのが、後攻でスキップのラストストーンを投げる時です。エンドの15投目が終った時点でこちらのストーンがショットロック(No.1)、ドローが決まると2点目が取れる状況です(図1)。スキップは「決めないといけない」と思い緊張しますか?どれくらいの確率でドローが決まるのでしょうか。ミスするとすると、短いですか、アドレナリンのせいでハウスをスルーすることが多いですか?また、相手のストーンをヒットし、自分がステイすれば2点取れる状況もチャンスです(図2)。その他、相手のミスには、ロールアウト、テイクアウトミス、ドローミス、ヒットアンドロールミス、ガードミス、スウィーピングミス、ノーズヒット、バーントストーン(ストーンに触れる)、コミュニケーションミス、消極的な考えなどがあります。これらの一つが起きた時には、「チャンス!」と思うことです。また、相手のミスを待つのではなく、自分でいいショットを決めると展開が良くなる場合もチャンスと認識できるようにしておきましょう(図3)。先攻で1点スチール、あるいは後攻で2点取るためには、いいショットを1投だけ決めればよいのです。後はそのいいショットをエンドの終わりまで維持するだけです。
< 相手のストーンは出すな? >
 相手のストーンがハウスに入ると、どうしても気になるものです。特に相手のストーンがショットロック(No.1)だと、構いたくなるのが心情です。ショットロックをテイクアウトしたくて難しいショットを選び、結局ミスをしてしまうケースも少なくありません。場合によっては、ショットロックをその場面では放置し、他の手段を講じた方が、後の展開に有利な場合もあります。相手のストーンがTラインの後ろにあるときは特にそうです(図4)。この例では、今はコントロールゾーンの支配がエンドの展開に大切であると考えられるので、ショットロックではなく、コントロールゾーンにある相手のストーンをヒットするほうが得策です。1エンドに8個のストーンを利用できます。残りのストーン数を考えて、何をしたいのかショットで意思表示しましょう。

< 点がほしい時はストーンをハウスに入れるな? >
 負けているとき、相手がハウスにストーンを入れてくると、ついつられて相手のストーンをヒットしたくなります。これは相手の思う壺で、ヒット合戦でストーンの数が少なくなるのは勝っているチームの望むところです。勝っていればハウス内に(もっと勝っていればハウスをスルー)、負けているときはハウスの前にストーンを置くのが作戦の基本です(図5)。点数によって、リードのショットだけでなく、セカンドやサードのショットまで我慢して前に置く必要があることもあります。まずハウス前にストーンをおいて、その後ろにカムアラウンドできる障害物を作ります。そのあと、後ろに隠れるショットを狙います。相手のノーズヒットをひたすら待ちます。ストーン数の関係でどうしてもハウスに入らないといけないときは、フリーズやタップバックで、わざと相手のストーンを残して、こちらのストーンをヒットしにくくします。


< 相手にショットさせる >
場合によっては、相手にショットをさせる状況を作るのも作戦の一つです。図6は、J-M戦、7エンド目、4−5で後攻●のチームのスキップの1投目です。ここまで●チームはサードが○のストーンのヒットを狙いミスをしています。○のスキップは1投目でボタンにかかった●のストーンをヒットする作戦でしたがワイドでミスをしました。
ここで考えることは、1.相手のスキップにプレッシャーをかける(難しいショットを残す)、2.自分はライン、ウェイトなど易しいショットを選ぶ、3.相手のスキップに考えさせる。4.相手のスキップに同じショットをさせない、5.相手が嫌がるところにストーンを配置する、などです。実際はハウス左の○をヒットに行き、ミスをして相手のスキップにはボタンにかかった●をヒットアンドロールされ、2点スチールされています。3点ビハインドでラストエンドに向かうことになりました。ここで、センターガードをプレーしていたらどうでしょうか、相手のスキップは、少なくとも同じショットは選択できません。そして、「考えさせる」分だけ相手にプレッシャーをかけることになります。